関節リウマチや癌などの発症リスクに。

近年、歯周病菌による慢性炎症が歯周組織の破壊のみならず、さまざまな組織や臓器の炎症性変化と関連していることが明らかになってきました。また、歯周病は全身疾患を誘発する危険因子に含まれるようになりましたが、それらの疾患の多くが腸内細菌叢のディスバイオシスと関連するということも判明しているのです。

例えば、重度の歯周病患者の唾液1mL中にはジンジバリス菌が10⁶オーダーで含まれると言われています。人は1日1〜1.5Lもの唾液を産生して飲み込んでおり、口腔細菌叢に占めるジンジバリス菌の比率は約0.8%程度。その場合、重度の歯周病患者はジンジバリス菌のみで10⁹から10¹⁰オーダー、口腔細菌全体となると10¹²から10¹³オーダーを毎日飲み込んでいることになります。そして、ディスバイオシス状態の病的口腔細菌を毎日飲み込むことで腸内細菌のバランスが崩れ、有害細菌の比率が高まり、増加する状態が継続すると、さまざまな疾患の発症リスクが増大することにもつながると考えられます。


動物実験においても、歯周病菌であるジンジバリス菌を口腔から投与した際、腸内細菌叢が変動すると同時に腸管バリア機能を司るタイトジャンクションタンパク質の発現低下、血中内毒素レベルが上昇したという報告もあるほど。いったん飲み込まれた歯周病菌が腸内細菌叢を変化させたことは、腸内の有害細菌のみならず、飲み込まれた口腔細菌も腸管から再び全身循環に入る可能性を強く示しているのです。関節リウマチや非アルコール性脂肪疾患、動脈硬化症、癌など、歯周病が危険因子となるさまざまな全身疾患は、口腔内と腸内の関係性も示しています。そのことからも、ハブラシとハミガキによるプラークコントロール、必要に応じた歯科検診でのPMTC(※)など日常的な口腔内ケアが口腔内環境ひいては腸内環境を整えることとなり、疾患予防にもつながると考えられます。


※PMTC:プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニングの略称で、歯科医師・歯科衛生士などの専門家による歯のクリーニングのこと。

※参考文献 化学と生物/2016年 54巻9号 633-639頁【「歯周病と全身疾患の関連口腔細菌による腸内細菌叢への影響」

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