産科併設歯科で実施された前期妊婦(妊娠週数が平均16.5週)129名に向けた意識調査では、妊婦におけるオーラルヘルスへの意識や取り組みに対する現状が明らかになっています。自分自身や生まれてくる子どもの口腔の健康に対してどのような意識を持っているかについて行ったアンケートによると、「現在の体調」や「現在の歯磨きの状態」において「つらい」と答えた方が、中期妊婦(平均29.5週)を対象にした調査時よりも多い結果に。また、「何かの時に相談できる歯科」が「あり」の方や「齲蝕原性菌の母子伝播」について「知っている」と答えた方は、中期妊婦と比較して少ないという結果が出ています。前期妊婦は中期妊婦と比べて時期が早いことから、まだつわりによる体調不良や妊娠期特有の精神面の不安定が続き、これらの違いが影響していると著者らは考察しています。
前期妊婦は、出産後に関与してくる歯周病・喫煙・飲酒と早産・低体重児出産の関係や、齲蝕原性菌の母子伝播に関する知識など、歯科からの情報を得る機会が少ないため認知度が少なかったと考察されています。そのため、妊婦に対して妊娠初期から口腔健康やハミガキによるプラークコントロールなどの指導を、自治体や地域医療機関等がより積極的に行うことは重要だといえます。 そうすることで、妊婦の口腔を含めた健康に対する意識の向上、さらには、生まれた子どもの健康にも繋がっていきます。妊娠期は人生の内の10か月という限られた期間の中ですが、胎児の成長による妊婦の身体の変化だけでなく心理面も大きく変化します。妊婦に対してその妊娠期ごとに適切なオーラルヘルスケアの指導を行うことは、妊婦はもちろん、家族や生まれてくる子どもの健康に大きく影響をもたらします。
※参考文献 小児歯科学雑誌 51(3): 380−389 2013【「妊婦の口腔健康に対する意識調査」】